天井のパネルなど対策が施された段ボール授乳室=松江市岡本町、秋鹿なぎさ公園
天井のパネルなど対策が施された段ボール授乳室=松江市岡本町、秋鹿なぎさ公園

 道の駅秋鹿なぎさ公園(松江市岡本町)に寄贈された段ボール製の授乳室が、交流サイト(SNS)などで物議を醸している。設置を評価する声がある一方、天井が開いているなど、安心して授乳できる環境ではないといった投稿が相次いだ。市は急きょ天井を覆う対策を講じた。今後も利用者の意見を取り入れて改良を進める考えだ。(片山皓平)

 授乳室は強化段ボール製で、幅と高さが約2メートル、奥行きが約1メートル、重さ20キロ。光を取り込むため天井が開いており、入り口にカーテンが付いている。

 設置報道を受け、X(旧ツイッター)では「鍵も天井もなく怖すぎる」「いつのぞかれるかも分からない質素な作り」と、批判的な書き込みが相次いだ。道の駅設置者の松江市にも、22日までに10件以上の意見が寄せられた。

 22日に公園に来た人からも賛否があった。8カ月の娘と夫と一緒に訪れた出雲市の主婦(28)は「道の駅にあることは助かる。ただ、子どもと2人だけでは使いにくい」と話した。3歳の息子がいる安来市のパート職員女性(27)は「授乳していることが分かるので恥ずかしい。入るところを見られるのも嫌だ」と抵抗感を示しつつ、おむつ交換でも使えるようになることを求めた。

 市と道の駅の指定管理者は21日、天井を半透明のパネルで覆い、床にはマットを敷いた。利用時にはスタッフへの声がけをお願いする注意書きを掲示し、使用中は他の利用者が近づかないようにするという。

 授乳室は日本道路建設業協会が19日に寄贈した。全国道の駅連絡会や女性駅長会の意見を参考にして必要性が高いと判断し、3年間で全国150カ所に贈る予定という。同協会の三平利之総務部長はSNSの反応を受け「道の駅の環境を改善し、子育て世代の母親に使ってもらうためだった。批判は貴重な意見として真摯(しんし)に受け止め、今後については鋭意検討する」と話した。市は今後、入り口のカーテンを2重にする予定で、市スポーツ課の佐々木武課長は「意見を聞きながら、利用しやすくなるよう対応したい」とした。

 段ボール製の授乳室は板野紙工(広島市)が製造。災害時の避難所で女性の子育て環境が整わない中、地域の人から相談を受けて作り始めた。段ボールでは施錠できる設計にすることは難しいため、設置管理者の目が届く場所に置くことが想定されている。

 国土交通省中国地方整備局によると、山陰両県の道の駅で授乳室が設置されているのは、島根県が29駅のうち10駅、鳥取県が17駅のうち10駅という。