多彩な表情の石見神楽面が並ぶ神楽殿の一角
多彩な表情の石見神楽面が並ぶ神楽殿の一角
私設の神楽殿に立つ竹内惟臣さん。石見神楽面のコレクションが壁一面に並ぶ
私設の神楽殿に立つ竹内惟臣さん。石見神楽面のコレクションが壁一面に並ぶ
日本遺産に認定された石見神楽の定番演目「大蛇」(日本遺産認定記念「石見の舞い『神降臨祭』特別公演~石見に受け継がれる神楽の文化~より。江津市石見神楽連絡協議会)
日本遺産に認定された石見神楽の定番演目「大蛇」(日本遺産認定記念「石見の舞い『神降臨祭』特別公演~石見に受け継がれる神楽の文化~より。江津市石見神楽連絡協議会)
多彩な表情の石見神楽面が並ぶ神楽殿の一角 私設の神楽殿に立つ竹内惟臣さん。石見神楽面のコレクションが壁一面に並ぶ 日本遺産に認定された石見神楽の定番演目「大蛇」(日本遺産認定記念「石見の舞い『神降臨祭』特別公演~石見に受け継がれる神楽の文化~より。江津市石見神楽連絡協議会)

 般若のにらみつけるような鋭い眼光、ひょっとこの柔和な表情。竹内惟臣(ただしげ)さん(80)=浜田市大辻町=が自宅の敷地内に設けた「神楽殿」には、壁一面にさまざまな石見神楽面が並ぶ。50年間で集めた面は500点以上。「同じ種類の面でも作者によって表情が全く違う。ずっと見ていても飽きない」。竹内さんが自慢の面を見つめ、ほほ笑んだ。

 収集を始めたのは1970年。大阪万博を訪れた際にお土産を買いそびれ、帰りに浜田市在住の神楽面職人・岩本竹山氏(故人)の工房に立ち寄って般若の面を買った。ぎらりと光る金色の目、かっと見開いた深紅の口。迫力と色気に心を奪われた。

 その後も工房に通って面を購入。建具を作っていたことから、面を飾る額を作って岩本氏ら同市内の神楽面職人に納め、料金の代わりに面をもらうことも多かった。
 表情の迫力にこだわったり、常識を覆す色使いを求めたりと「世界に一つだけの面」の注文も重ねた。自宅の廊下に並べていたが、飾り切れないほど数が増えた。「神楽殿」を設け、見学を受け付けるようになった。

 石見神楽は浜田市など島根県西部の人々の暮らしに根差す。「塵輪(じんりん)」「鍾馗(しょうき)」「大蛇(おろち)」…。定番の演目の囃子(はやし)が聞こえると血が騒ぐという人も少なくない。土地柄を反映し、神楽殿にはこれまでに約1300人が来場。県外から足を運ぶ愛好者もいる。

 2019年5月に日本遺産に認定された石見神楽。生粋の愛好者として感慨はあるが、憂いも抱く。「今の石見神楽は『ショー』の側面が強くなっている。太鼓をたたきやすいように斜めに置くなど、伝統を重んじない社中が少なくない。歴史に沿った本物の石見神楽を受け継いでほしい」
 自らも襟を正し、面の見せ方にこだわる。神楽殿では、照明器具がない中で舞った昔の雰囲気を再現するため、蛍光灯ではなく裸電球を使う。「石見神楽を身近に感じ、歴史を知ってもらえる場にしたい」。思いを面に託し、魅力を次代に伝える。

 神楽殿の見学は事前予約制。問い合わせは竹内さん、電話0855(22)7532。

 石見神楽公式サイト http://iwamikagura.jp/