フードジャーナリスト 佐々木ひろこ氏
フードジャーナリスト 佐々木ひろこ氏

「日本の水産資源を守り、食文化を未来ににつなぐために」
少なく取り付加価値を

 山陰中央新報社の石見政経懇話会、石西政経懇話会の定例会が3、4の両日、浜田、益田両市であり、フードジャーナリストで、一般社団法人「Chefs for the Blue」代表理事の佐々木ひろこ氏が「日本の水産資源を守り、食文化を未来につなぐために」と題して講演した。取った魚介類に付加価値を付けることで、「少なく取って高く売る」サイクルの確立が必要だと訴えた。要旨は以下の通り。

 日本は世界有数の排他的経済水域(EEZ)と、海水の体積を有し、多種多様な魚を育む海流にも恵まれている。魚介類からだしを取る文化は日本だけで、全ての料理の根幹となっている。

 ところが、日本の漁業生産量は最盛期の1984年と比べて3分の1にまで減少。不漁の魚種が増え、今や食用魚介類の約4割を輸入でまかなう状況にある。

 漁獲減の原因は、国土の乱開発や海の汚染、温暖化など複合的だ。だが主因の一つに挙げられるのは、漁船の性能向上に伴う魚の乱獲。国は70年ぶりに法改正し、漁獲競争を防ぎ、適切に資源管理を行うことを決めた。一方、漁獲量が制限されれば漁業者の生活が立ち行かなくなる恐れがある。社会全体で魚の小売り単価を上げる必要性を理解し、水産業を支えることが不可欠だ。

 また、料理人は生産者、消費者双方とつながりを持つことができ、メディアへの発信力も強い。こうした料理人の潜在能力を生かし、フードイベントやセミナー開催などで、持続可能な海を目指した啓発活動に取り組んでいくべきだ。日本の食を支える海の実情に目を向け、生産者や加工業者、消費者などができることを一緒に考えて、動いていくことが大切だ。

(中村成美)