2025年大阪・関西万博の会場となる大阪市の人工島・夢洲=4日(共同通信社ヘリから)
2025年大阪・関西万博の会場となる大阪市の人工島・夢洲=4日(共同通信社ヘリから)

 2025年に開かれる大阪・関西万博の経費が再び膨らんだ。海外パビリオンの建設遅れも解消されておらず、開催そのものに冷ややかな視線を向ける人が増えており、「万博不信」は深刻だ。

 運営主体である日本国際博覧会協会をはじめ、政府や大阪府・市が情報開示と説明責任を軽視してきたツケは重い。経費と工期の両面から計画を見直すべきではないか。万博を開催する意味を問い直し、運営の責任と規律を徹底するべきだ。

 万博の費用が拡大したのは、会場整備の資材費や人件費の高騰が原因だ。当初は1250億円とされてきた整備費は、20年に1850億円に修正され、今回は2350億円に拡大した。予備費を含め、最初の見積もりの約1・9倍になった。

 会場整備費は政府、大阪府・市、経済界が3分の1ずつ担うため、3者の追加負担はそれぞれ167億円が見込まれる。政府の追加分は23年度補正予算案に計上される。これ以外に、博覧会の運営費も膨張している。本来は入場料収入で賄うはずだったが、会場の警備費用を切り離し、政府が200億円を引き受ける方向になっており、国民負担は重くなる。

 博覧会協会は「物価上昇は想定外だった」としているが、まるで人ごとではないか。大阪維新の会の府議から「追加分の予算は政府が負担すべきだ」という声が上がったのにも首をかしげる。万博で最もにぎわうのは大阪であり、維新は招致にも熱心だった。追加負担から逃げるわけにはいかないはずだ。3分の1を負担するルールに異を唱える余地はないだろう。

 万博招致は大阪の人工島「夢(ゆめ)洲(しま)」の開発を軌道に乗せるのが目的の一つだった。東京五輪が臨海部開発に直結していたのと同じ構図だ。

 地域開発のてことして、大型イベントを招致する例は海外にも多いが、住民が費用負担や赤字を嫌い、招致に反対することは珍しくない。共同通信が10月半ばに実施した世論調査でも、万博の会場整備費の膨張に「納得できない」という回答が約76%に上った。開発型のイベントが敬遠される現実を直視し、住民の支持が得られる博覧会の姿を探らねばならない。

 海外パビリオンの建設はこれから本格化する。来年は建設分野の労働時間を短縮する規制が導入されるが、万博工事だけ例外とする案は論外だ。

 夢洲の隣接エリアでは、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の工事が万博期間中も進められる可能性がある。人工島への橋やトンネルを多くの建設車両が往来すれば、万博来場者が利用するバスや車の妨げになりかねない。

 万博工事の現場では電力供給網がまだ整備されていない。早急に改善する必要がある。自ら望んで万博とIRを手にした大阪府・市は、全体のプランをもっと丁寧に検討し、インフラ整備を主導してほしい。

 生命を慈しみ、未来社会をイメージするのが大阪・関西万博であり、科学や技術の魅力を伝える場でもある。11月末には入場券の販売も始まる。来場者が回遊しやすい環境づくりや真夏の安全確保もまだこれからだ。

 パビリオンの建設遅れや費用の膨張ばかり話題になるのは、あまりにお粗末ではないか。関係者は自分の役割と真剣に向き合い、混乱に終止符を打たねばならない。