大正時代の末期、島根県邑智郡阿須那村(現・邑南町)唯一の診療所として開院し、現在はゲストハウスに生まれ変わった旧服部医院(同町宇都井)で、当時診察していた女医の孫が1日限定の「健康教室」を開く。女医に「お世話になった」と懐かしむ住民がいることから、ゲストハウスを運営する井上英司さん(62)が企画した。
服部医院は1924年に開院。地元出身で、東京女子医学専門学校(現・東京女子医大)を卒業した服部世津子さん(故人)が帰郷した際、住民が協力して木材を集め、建設した。
服部さんは、急患に備えて毎日普段着で就寝するなど、地域住民の健康のために尽力した。
83年に亡くなった後は空き家となったが、2020年に建物を借り受けた井上さんがゲストハウス「うづい通信部」としてオープンさせ、「天空の駅」として知られる旧JR三江線宇都井駅を訪れた観光客が立ち寄る人気スポットになっている。
オープン後も井上さんは町内外のお年寄りから服部さんを慕う声を聞いていたことから「住民の大切な医院のために、何かできないか」と思案。服部さんの孫で、兵庫県川西市で整形外科医として病院に勤めている服部匡次さん(53)に講演を依頼し、快諾を得た。
匡次さんは11月4日、腰痛や骨粗しょう症について講演する予定で、来場者の健康相談にも応じる。幼少期に医院を何度か訪れたことがあるといい、住民から祖母の思い出話が聞けるかもしれないと、楽しみにしているという。
井上さんは「医院に縁のある人が当時に思いをはせる機会にしたい」と準備を進めている。講演は午後3時から、参加費は千円で飲み物が付く。問い合わせは井上さん、電話090(7127)4334。
(吉野仁士)