作品「命のいろ」の横で、入賞を喜ぶ野﨑千愛季さん=東京都港区、国立新美術館
作品「命のいろ」の横で、入賞を喜ぶ野﨑千愛季さん=東京都港区、国立新美術館
作品「命のいろ」の横でポーズを決め、受賞を喜ぶ野﨑千愛季さん=東京都港区、国立新美術館
作品「命のいろ」の横でポーズを決め、受賞を喜ぶ野﨑千愛季さん=東京都港区、国立新美術館
作品「命のいろ」の横で、入賞を喜ぶ野﨑千愛季さん=東京都港区、国立新美術館 作品「命のいろ」の横でポーズを決め、受賞を喜ぶ野﨑千愛季さん=東京都港区、国立新美術館

 3日に開幕する「第10回日本美術展覧会(日展)」の彫刻部門で、宍道高校通信制4年の野﨑千愛季(ちあき)さん(18)=松江市西川津町=が、初出品で入選を果たした。精巧な人形作品が話題の新進気鋭の若手で、作品は地上に出て開放感を味わう炭鉱労働者を表現。評価を喜びつつ「自分が思う美しさを表現できて良かった」と手応えを語る。(曽田元気)

 野﨑さんは幼いころに創作を始め、2021年に彫刻をスタート。独学で本物の人間と間違えるような人形を作り続ける。次世代を担う工芸作家の発掘・育成を目的にした22年の美術工芸甲子園で、山陰両県の高校生で初めて最高の大賞に輝いた。

 今回の入選作「命のいろ」は、明治から大正ごろの炭鉱労働者が地上に上がって空の青さや太陽の光を一身に浴び、両手を伸ばして喜んでいる様子を高さ80センチの人形で表現した。新型コロナが5類に移行し、日常へと戻り始めた5月に着想を得た。

 こだわった肉体美は、裸芸を得意とする人気お笑い芸人や太鼓の演奏者を参考にし、前鋸筋(ぜんきょきん)やあばら骨に至る細部を小刀で削ったり指で盛り付けたりし、2カ月かけて仕上げた。作品から真っすぐな精神性を伝え、理不尽なものへの感情から和らいでもらいたいという創作に対する信条を込めている。

 現在はイスラエル軍とイスラム組織ハマスによる戦闘をきっかけに、戦争と平和をテーマにした作品に取り組む。完成後は知らない土地を訪れ、人の生きざまを感じ、見識を広げる計画。「いろんな土地を訪れ、滞在し、作品に生かしたい」と思い描く。

 彫刻部門は全国から95点の応募があり、68点が入選。新入選は17点だった。山陰両県の他部門の入選は洋画13点、日本画5点、工芸美術1点、書2点だった。作品は国立新美術館(東京都港区)で26日まで展示される。