製材用で積み置かれた原木=松江市矢田町、野口木材店
製材用で積み置かれた原木=松江市矢田町、野口木材店

 「ウッドショック」と呼ばれる世界的な木材価格高騰の影響が、山陰両県に押し寄せている。材木不足を受けて製材業者が受注制限に動いているほか、工務店の一部は上昇分を吸収しきれず住宅価格の値上げに踏み切った。長期化すれば、影響はさらに広がり、消費者に直撃しそうだ。 (久保田康之)

 住宅の構造材を松江市内の工務店などに出荷している野口木材店(松江市矢田町)は、土台に使用する原木の丸太価格が半年前と比べ2倍以上に跳ね上がり、仕入れに苦慮する。

 輸入する米マツは出荷制限で仕入れ量が半減。スギやヒノキも品薄で、野口英司社長は「今のストックが尽きたら、次はいつ入ってくるか分からない」と頭を抱える。

 価格高騰の発端は、米国の住宅需要の急増だ。コロナ禍での低金利政策に後押しされ、住宅着工が増加。景気が急回復した中国でも需要が高まり、世界的な木材の争奪戦で価格が上昇している。

 住宅用建築資材を扱うミヨシ産業(米子市両三柳)は仕入れ不足や値上がりの状況を踏まえ、新規顧客からの受注を一部制限した。

 既存顧客への供給を優先しながら、入手できる材を工面し、使う材種の変更も工務店に提案するなど対応に追われる。プレカット事業部の高野肇之部長は「1棟でも多くの住宅が施工できるよう最善の策を考えるしかない」と強調した。

 工務店は我慢の限界を迎えている。島根県東部の施工業者は4月末、1棟当たりの販売価格を5%程度値上げした。

 木材仕入れ価格の上昇分は企業努力で吸収してきたが、これ以上は耐えきれないと判断した。経営者は「木材が入手できているだけまだましな方。(値上げは)避けて通れず、どうしようもない」とこぼす。

 年約20棟の住宅を着工する豊洋(松江市西川津町)の木村直樹社長は、価格をいつまで据え置けるか悩みながら「一番の問題は工期の見通しが不明瞭であること。非常に困った状況だ」と先行きを案じた。