旬を迎えているケンサキイカが浜田漁港で久々の豊漁となっている。2021年はデータがまとまった4月までで303トンとなり、不振だった19、20年の年間数量を既に上回った。量だけでなく、サイズも良く、港は活気づいている。 (村上栄太郎)
ケンサキイカは「白イカ」と呼ばれ、5月までは沖合底引き網漁船主体に漁獲。産卵期を迎えて沿岸に集まる初夏から沿岸イカ釣り漁が本格化する。
島根県水産技術センターや浜田市のデータで、11年は1784トンで水揚げ額は9億円を超えたが、その後は減少し、19年は225トン(2億1千万円)、20年は220トン(2億3千万円)と不漁にあえいでいた。
1~4月でみると、今年の水揚げ量は前年同期の約6倍に上り、5月以降も堅調に推移している。水産研究・教育機構水産資源研究所浮魚資源部(長崎市)によると、長崎県沖から島根県沖で豊漁傾向となり、詳しい要因は不明。昨年の産卵数は少なかったものの、個体の多くが大型魚類からの捕食を免れたと考えられるという。
JFしまね浜田支所沖いか部会の宅間彰部会長(49)は「体長30センチ超の型の良いイカが多く、まとまった量が取れる」と喜ぶ。近年の不漁でイカ釣り漁をやめる漁師が相次いだだけに「良い漁況が続いてほしい」と期待した。
販売や加工業者の取引も活発化している。山陰浜田港公設市場(浜田市原井町)で営業する中井鮮魚店の中井浩代表(59)は「漁獲量が減少する浜田漁港で数少ない明るい兆し。仕入れ値も安いため、積極的に売っていきたい」と意気込む。
「白いか一夜干し」を通販サイトやカタログで販売する魚勝商店(同市日脚町)は、昨年より3割多い2500キロを仕入れた。名田勝之取締役(37)は「中元用の需要は確保できた。必要があれば買い足したい」と話した。