その小さな本屋は、淡水と海水が混じり合う汽水池のほとりに立つ。異質な者同士が出会える空間になるように。まだ見ぬ本と巡り合い、新たな自分へと離陸できるように。ふたつの願いを込め、店主の森哲也(37)は「汽水空港」と名付けた。

 だが、こだわり抜いた約5千冊を所蔵する独立系書店は、専業の仕事ではない。午前中は田畑を耕し作物を育て、午後は稼ぎの定まらない書店で過ごす。両者がそろって初めて、理想の生き方に近づくことができる。

▽CMに衝撃

 早熟な子どもだった。幼稚園の頃、テレ...