第六章 来去来(二)

 ここ玉(たま)屋(や)は吉原でも名うての大(おお)見(み)世(せ)で、鱗屋に礼として招かれたのが登楼の最初だった。

 礼というのは鱗屋と鍋(なべ)善(ぜん)の破談に助...