閉店セレモニーで従業員の前であいさつする錦織要社長(中央)=松江市朝日町、一畑百貨店
閉店セレモニーで従業員の前であいさつする錦織要社長(中央)=松江市朝日町、一畑百貨店

 島根県内唯一の百貨店、一畑百貨店(松江市朝日町)が14日、営業を終了し、65年の歴史に幕を下ろした。最終日は閉店を惜しむ約1万2千人が来店し、長年親しんだ店舗との別れを惜しんだ。百貨店「ゼロ県」は山形、徳島に続いて3県目となる。
 

▼閉店セレモニーの様子

 午前10時の開店前から、1階の正面入口付近には買い物客約50人が集まった。衣類や化粧品、食品など各売り場は終日にぎわい、来店客が店員に感謝の言葉を伝える場面もみられた。松江市山代町の会社員、向井祐文(さちふみ)さん(34)は「いろいろな催しがあり、楽しみだった。寂しくなる」と話した。この日は前年同日の約5倍の8100万円を売り上げた。

 営業を終えた午後6時40分ごろ、1階出入り口であった閉店セレモニーで、錦織要社長は「一畑百貨店は単なる商業施設ではなかった。文化や情報の発信地として、地域の発展にも微力ながら貢献できたのではないか」とあいさつ。シャッターが下りるのに合わせ整列した従業員らが頭を下げると、詰めかけた大勢の利用客から盛大な拍手が送られ、「ありがとう」とねぎらいの言葉がかけられた。

 同店によると、県内外の小売り業者などと出店交渉しているが、現時点で跡地利用のめどは立っていない。松江市上西川津町の会社員佐野千朱さん(58)は「駅前に活気を生むためにも、たくさんの人が集える場所になってほしい」と願った。

 一畑百貨店は1958年に松江市殿町で開業し、98年にJR松江駅前の現在地に移転。売上高は2002年3月期にピークの108億円を記録したが、人口減少や競合店の進出で23年3月期は43億円に落ち込み、同6月に閉店を発表した。
 (石倉俊直)


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