業界最速の新型田植え機を製造する三菱マヒンドラ農機の社員=松江市東出雲町揖屋、同社
業界最速の新型田植え機を製造する三菱マヒンドラ農機の社員=松江市東出雲町揖屋、同社

 農機メーカーの三菱マヒンドラ農機(松江市東出雲町揖屋)が、業界最速の田植え機能を持った新型田植え機を開発した。大規模な水田での利用に適しており、就農者が減少する水稲栽培の効率化を後押しする。日韓両国で2月に発売する予定で、今後5年間で2千台超の販売を目指す。

 2020年に開発に着手し、エンジンの強化や水平自動制御機構の改良を行い、業界最速(同社調べ)となる1秒間に1・95メートル分を植え付けられる速度を実現した。イネの苗を植える間隔に応じ、植え付け用の爪の本数を変えられる「トランスフォーム植付システム」を搭載するほか、ほ場の状態に左右されず、植え付けの深さを一定に保てる機構も備え、スピードと精度を両立させた。

 植え付け時に散布する肥料を入れておくタンク容量を増やしたことで、無補給のまま従来機の1・8倍となる60アールの植え付けが可能になり、作業効率を高められる。

 農林業センサスによると、国内のコメ生産者(水稲作付経営体数)は2005年の140万から20年には71万に半減し、高齢化も進んでいる。一方で農地は集積が進んで大規模化する傾向にあり、限られた人手で効率的に栽培するニーズが強まっている。韓国でも性能の高い日本の農機の引き合いは強いという。

 6条植えと8条植えの2種類があり、希望小売価格は342万~573万円。韓国内では、大手トラクターメーカーのLSエムトロンと提携し、OEM(相手先ブランドによる生産)製品として販路を広げる。

 三菱マヒンドラ農機の23年3月期の売上高は435億6900万円。新型機は、主力に位置付けている水稲関連製品におけるアジア地域戦略の最重要機種として、販促を進める方針だ。

 同社経営戦略室の上代哲也担当は「当社の技術を詰め込んだフラッグシップとなる田植え機だ。完成品メーカーとして地場産業にも好影響を与えられるよう、事業を成功させたい」と話した。(今井菜月)