認知症が原因とみられる徘徊(はいかい)で行方が分からなくなった高齢者の早期発見、事故防止を目的に、島根県奥出雲町が、衛星利用測位システム(GPS)の端末を町民に無料、無期限で貸し出している。専用サイトにログインすることで、端末を身に着けた高齢者の位置情報がリアルタイムで確認できるという。(山本泰平)
島根県警によると、認知症か、その疑いのある高齢者が行方不明になったとの届け出が、2023年は44件あった。
町は18年、地域での認知症高齢者の見守り活動を強化した。雲南署のほか雲南市、飯南町や協力団体と協定を結び、徘徊の可能性があり、家族らの申請を通じて登録された高齢者が行方不明になった場合、名前や特徴を協力会員へ一斉メールで送り、情報提供を求める仕組みを運用している。
奥出雲町内では70~80代の11人を登録。GPS貸し出しは登録者が対象で、町によると、3人が利用している。
端末は縦約4・5センチ、横約4センチ、厚さ約1センチで、衣服のポケットなどに入れやすいサイズ。1回の充電で10日間動くという。外出する時に確実に身に着けてもらえるかどうかの課題はあるものの、1年間限定で端末を貸し出している松江市では、利用者から「場所が把握でき、自分たちで捜しやすくなった。助かっている」という声があったという。同市では19年から延べ62人が利用している。
無期限で端末を貸し出すのは、奥出雲町が島根県内の自治体では初めて。契約手続きや支払いといった家族の負担を減らす。端末購入費などの初期費用約1万7千円と、1カ月当たりの使用料770円を町が負担。2024年度は10人程度の利用を見込み、当初予算案に必要経費を盛り込む方針。
町健康福祉課の吉川明広課長は「GPSを渡すことで、町もサポートしやすくなる。町民の安全で安心な生活を支援したい」と話した。