ソ連崩壊から2年になる1993年12月上旬、カザフスタンの当時の首都アルマトイ郊外は一面、銀世界に覆われていた。「ビタリーから伝言を預かってきたよ」。数カ月前に知り合った「コルバトル大佐」を名乗る男は、米大使館1等書記官のアンディ・ウェーバー(63)を散歩に誘い、一片のメモを手渡した。

 「U235、90%、600㎏」。メモに目を落としたウェーバーは息をのみ込んだ。メモをポケットにしまい大使館に戻ると、すぐにワシントンへ極秘公電を打った。急を...