結城康博氏
結城康博氏

 山陰中央新報社の石見政経懇話会、石西政経懇話会の定例会が14、15の両日、浜田市と益田市であり、淑徳大学総合福祉学部教授の結城康博氏(54)が「島根の医療・介護から考える経済政策」と題して講演し、社会インフラとしての福祉の充実を訴えた。要旨は次の通り。

 介護人材が不足する日本は、2035年に団塊世代が85歳以上になり、介護難民が続出する危機にある。スウェーデンなど北欧諸国は安定した労働力を確保するため、安心して共働きをしてもらおうと福祉施策を充実させた。日本も社会ニーズが高まる福祉に投資し、充実させるべきだ。

 介護報酬の改定内容が決まり、24年度からは全体では1・59%の増額が決まった。一方で、訪問介護サービスは基本報酬が引き下げられた。訪問介護員の有効求人倍率は22年度時点で15倍に膨れ上がっている。担い手の26・3%は65歳以上だ。非正規職員も多い。配偶者手当が支給されなくなる「103万円の壁」を意識して働く人も少なくない。単なる賃上げでは人手不足の解決にならず、抜本的な社会制度の見直しも必要だ。

 島根県の年齢別人口割合は20~30代が少なく、若者が進学や就職を機に都会に出ていく。少子化対策として、出生数を増やすだけでなく、県外に出た若者をUターンさせたり、地方に定着させたりしなければ、県内の内需は拡大せず、地域経済も活性化しない。

 地元に残る若者に公務員は人気だ。自治体が介護職を公務員として雇う「公務員ヘルパー」の採用などを考えてほしい。福祉の充実を地域の雇用創出や経済活動維持のための投資と捉えて取り組むことは、人口減対策になり得る。(森みずき)