短歌 安部歌子選

画面には亡父によく似た笠智衆一語一語に甦る父         江 津 大岩 郁夫

  【評】そこに居るだけで存在感のあった笠智衆、話し方までも父に似ているのだ。上句から下句への流れにも無理がなく手堅い表現の一首と思う。三句切れと結句の体言止めにも余韻が残る。

日に千歩あるく予定に新しき靴を買いきぬ小春日和に       安 来 鐘築 京子

  【評】一日に千歩あるこうと決心して靴を買ってきた。その日が小春日和であったという結句でこの一首が大きく膨らんだ。作者の前向...