途中で転倒しながら、立て直して日本新記録という圧巻の走りだった。陸上の日本選手権男子3000メートル障害で五輪出場を決めた三浦龍司選手(順大、浜田東中出)の出身地・浜田市では、パブリック・ビューイング会場の市野球場(浜田市黒川町)に約400人が集まり、涙ぐむ人もいるなど、喜びを共にした。 (勝部浩文)
「どこまで行くのか、計り知れない」。細身の体がフィニッシュラインをまたいだ瞬間、浜田ジュニア陸上教室で小中学生時代に指導した上ケ迫定夫さん(67)=浜田市生湯町=は思わず口にした。
5月に自身が出した日本記録をさらに1秒余り縮める8分15秒99。記録を次々更新する教え子の姿に「わたしたちは五輪出場で喜んでいるが、本人はもっと上を見ているのだろう」と話し、本番でのメダルを期待した。
後輩に当たる陸上教室の子どもたちも駆け付けた。レース終盤、三浦選手が水濠(ごう)を抜けた直後に転倒するアクシデントに見舞われた時は、一瞬悲鳴が上がった。すぐに先頭に追い付き、トップを独走。2年前に陸上を始めたという市立松原小6年の佐藤宏祐君(11)は「すごすぎる。三浦選手のように速くなりたい」と目を輝かせた。
同級生たちも快挙を素直に喜んだ。幼なじみ4人で訪れた浜田市上府町の会社員佐々木智康さん(19)は「転倒後にすぐに追い付くところが負けず嫌いな龍司らしい」と興奮した様子。レース後には、野球場に横断幕が掲げられ、陸上競技では市出身者初の五輪選手誕生を祝った。