滑石保育園の保育士と園児=長崎市(同保育園提供)
滑石保育園の保育士と園児=長崎市(同保育園提供)

 若年層への感染力も高いとされる新型コロナウイルス変異株が広まる中、自治体が保育士ら子どもと接する職種にワクチンを優先接種する動きが始まっている。ただ、自治体によって取り組みに差があるのが現状だ。専門家は「接種対象外となっている子どもたちを守るため、全国で接種を急ぐべきだ」とする。

 

 ▽対策に限界

 日本小児科学会は16日、「子どもを感染から守るため、周囲の大人への接種が重要だ」とする考え方を発表。特に医療的ケアが必要で、感染時に重症化が心配される子どもに対応する障害児入所施設の職員や、日々子どもと接する保育所や幼稚園などの職員への接種を呼び掛けた。

 厚生労働省によると、児童福祉施設で複数の感染者が出た事例は、把握できただけで21日までに426件。5月には30件以上の週もあった。市中感染の再拡大に備え、施設対策が急がれている。

 長崎市の滑石保育園では1月に保育士と園児計16人が感染し、1週間ほど休園した。木村悦子園長(67)は「昨春から玩具や施設内の消毒を心がけ、職員には県外に出ず家族以外と会食しないよう要請するなど対策していた中のことで、衝撃を受けた」と振り返る。

 休園すると保護者が仕事に行けなくなるなど影響も大きいため、発生後は対策をさらに強化。3~5歳児にもマスクをさせ、食事中は静かにと呼び掛けるが、子どもに徹底させるには限界がある。木村さんは「他にできるのは保育士へのワクチン接種のみだ」と話す。

 

 ▽国が対応を

 福岡市や松山市などでは保育士に優先接種を始めている。ただ、長崎市は6月末からと、自治体により開始時期や接種の有無には違いもある。

 北海道苫小牧市の認可保育園でつくる協議会は14日、早期の優先接種を市に要望した。遠藤明代会長は「集団感染が起き誹謗(ひぼう)中傷に苦しんだ園もある。保育士のストレスも強い。安心して働ける環境を」と訴える。

 小児科医でもある森島恒雄愛知医大客員教授(感染症学)は「保育園は大半の運営主体が小規模で、医師の確保が難しく職場接種ができない。自治体による支援が必要だ」と指摘する。一方で「優先接種への姿勢は自治体でまちまち。国は優先接種の対象に子ども関連の職種を追加するなど、全国的な対応をするべきだ」と述べた。