短歌 安部歌子選

猪も猿もでますと札にあるその道の奥我が生家あり        大 田 西藤 慈子

  【評】こんな立て札があればどんなに荒れた場所かと誰でも思うだろう。厳しい暮らしがあったかもしれないが、作者にとっては大切な場所である。「我が生家あり」の結句に作者の深い思いがこもる。

日短の帰りはすでに闇の中不安を胸にハンドル握る        奥出雲 中林 正子

  【評】秋の日の暮れるのは早い。帰りの闇は想定外であったろう。闇の中を走る作者の不安な思いがしっかり伝わってくる。一首...