短歌 安部 歌子選

冬の日の歩道に長くのびる影ホントのアタシはとても小さい    安 来 木島めぐみ

  【評】歩道に長く延びる影も確かに自分のもの。影の長さに本当の自分の小ささを一瞬はっと感じた作者。つぶやきのような下句が人生さえも感じさせる。一瞬の作者の思いが深い一首になった。

また一つ老舗の消える島の冬開店前から客の並びぬ       隠岐の島 永海 千春

  【評】島の冬は厳しい。その厳しい冬に消えてゆく老舗。三句の「島の冬」の一語がその寂しさをより深くした。島では数少ない老...