映画「ベイビー・ドライバー」(2017年)は、天才的な腕を持つ運び屋の主人公が自身の運転技術を最大限に引き出すために、iPodで完璧な曲のプレイリストを作り、イヤホンで聴いて意識を高揚させ、スポーツカーで疾走する。そのリストの1曲目が1990年代に頭角を現したジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンの「ベルボトムズ」だ。
ギター2本にドラムというニューヨーク発の3人組で「ブルース大爆発」とのバンド名の通り、とにかくハイテンション。歌詞に意味があるようなバンドではなく、脳髄や鼓膜に直接訴えかける迫力が持ち味。正直、どこにブルースの要素があるのか理解できなかったが、かっこいいということだけは十分に伝わった。
ベルボトムズが収録された「オレンジ」(94年)、続く「ナウ・アイ・ガット・ウォーリー」(96年)の2枚のアルバムで人気を不動のものにした。
真骨頂はライブ盤かもしれない。米国トゥーソンでの96年の公演の模様が日本限定盤で発売されていた。最高に脂が乗っていた時期で、収録曲「ブルース・エックス・マン」は異様な興奮の中、過剰なパフォーマンスに客が爆笑する様子まで収められている。笑えるくらいエネルギーを与えてくれるバンドは、ジョンスペしかいなかった。(銭)














