慶応大学理工学部教授 栗原聡氏
慶応大学理工学部教授 栗原聡氏

 山陰中央新報社の石見政経懇話会、石西政経懇話会の定例会が17、18の両日、浜田市と益田市であり、慶応大学理工学部教授の栗原聡氏(58)が「生成AIが拓(ひら)く未来」と題して講演し、「生成AIは日本経済の起爆剤になりうる」と強調した。要旨は次の通り。

 人工知能(AI)は、米国の数学者ノイマンがコンピューターを発明したのと同時に始まった分野だ。コンピューターが大量のデータを学習し特徴を見つけるディープラーニングや、人間のような自然な会話で質問に回答するAIチャットサービスのチャットGPTの基礎となるアイデアは、1960年代ごろには既に生まれていたとされる。

 AIの技術革新は著しく、近年は文章、画像、音声などさまざまなデータを用いてチャットGPTで検索することができる。文字などを入力すれば、文章や画像を作成できる生成AIが次々と登場している。

 AIの研究、開発はいかに大量のデータを流し込み、いかに多くのコンピューターで計算するかの勝負で、資金力や労働力がある米国、中国に対して日本は劣勢だ。しかし、国内でも自社のデータベースにチャットGPTを付加して顧客の質問に答えるといった形での活用が進んでいる。

 生成AIの活用により、定型文のメールや報告書の作成といった業務の効率化が期待できる。高齢者が使いこなして新たな働き方を生み出す可能性もある。

 チャットGPTの登場により、最新AIを誰でも容易に利用できるようになった。一方で、AIを使える層と逆にAIに使われる層の格差が開く恐れがある。各社にAI専門社員を配置し、現場とAIサービスのマッチングが進むと面白いだろう。AIをどういうふうに活用するかについて、未来志向的な考え方がこれまで以上に重要になる。(中村成美)