仕事上のハラスメント(嫌がらせ)を全面的に禁じた国際労働機関(ILO)の条約が、6月25日に発効した。セクハラやパワハラといった全てのハラスメント行為を各国が法令で禁止し、違反者には制裁を求める内容で、初の国際基準となる。一方、日本政府は成立時に賛成票を投じたものの、国内法の整備が追い付いていないことから、批准を果たせていない。
条約はハラスメントを「身体的、精神的、性的、経済的損害を引き起こす可能性のある許容できない行動および慣行またはその脅威」などと定義。従業員だけではなく、求職者やボランティアらを幅広く保護対象としており、批准には禁止や制裁の規定も必要となる。
昨年6月施行の女性活躍・ハラスメント規制法では、企業に研修や相談窓口の設置といった対策を義務付けるだけで禁止規定はない。法整備時に経営者側が「指導と線引きが難しく、安易な訴訟が起きかねない」と主張したためで、刑法などに抵触しなければ個人への罰則はない。厚生労働省から企業への是正勧告や社名公表が限界だ。
定義も狭い。厚労省はパワハラを(1)優越的な関係がある(2)業務上必要で相当な範囲を超える(3)就業環境が害されるの三つを満たす言動とする。保護対象も雇用契約がある従業員に限られ、フリーランスや就活生への対策は努力義務にとどまる。
条約にも課題が残る。コロナ禍で各国の対応が遅れたため、2日時点で批准したのはアルゼンチンやエクアドルなど7カ国のみ。日本は規制法成立時、衆参両院が付帯決議で条約批准に向けた検討を求めたが、具体的な動きは見えない。厚労省幹部は「規制法ができてまだ1年。主要国も批准しておらず、参加は中長期的な課題だ」と話す。
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ハラスメント禁止条約
職場でのセクハラやパワハラといったハラスメントを、国内法で禁止するよう加盟国に義務付けた国際労働機関(ILO)の条約で、6月25日に発効した。民事、刑事上の制裁を設け、監視の仕組みや被害者の救済支援策を確立することも義務付けている。自社の労働者だけでなく、実習生や求職者などの「第三者」も保護の対象。批准は各国の判断だが、批准しない場合も、自国の状況を適宜ILO事務局に報告しなければならない。













