今春、韓国の作家ハン・ガンの「別れを告げない」(白水社)が名手・斎藤真理子の手で翻訳され、話題になった。本書のモチーフは済州4・3事件。日本の植民地支配からの解放後、南北分断を経て成立した韓国の現代史は、戦争と脱植民地化の痛みに満ちる。

 1948年4月3日、南朝鮮での単独選挙に反対する済州島での蜂起に対し、軍事独裁政権は米国を後ろ盾に島民たちを虐殺した。死者...