JR松江駅前(松江市朝日町)周辺の在り方について協議している松江市の官民組織「松江駅前デザイン会議」(会長・田部長右衛門松江商工会議所会頭)が、駅北口にある一畑百貨店跡地に商業機能を備えた複合施設を整備するデザインの素案をまとめた。同じく北口にある市有の「松江テルサ」は撤去し、広場の設置などを想定する。素案は9月2日から市と商議所のホームページで公開し、市民の意見を募る。
同会議の事務局を務める松江市が26日、市議会全員協議会と定例会見で明らかにした。素案は、建物などハード整備の具体的な実施計画ではなく、駅周辺の街づくりを進める上での官民の指針と位置づけ、5~10年先の中期的な視点で策定している。

一畑電気鉄道(松江市中原町)が所有する一畑百貨店の建物(地上6階地下1階、延べ約1万4千平方メートル)は解体し、宿泊や飲食機能を持った複合施設を整備する。
建物の解体や建設、運営は民間が担うのを想定している一方、市都市政策課の道橋朋教まちづくり推進室長は民間事業者について「市として選定を進めているわけではない」と説明。一畑電鉄は百貨店の土地や建物の売却を軸に複数の開発事業者らと交渉中で、錦織要取締役常務執行役員は「交渉は継続中でまだ何も決まっていない」とした。
ふるさと島根定住財団やハローワーク松江の出先事務所が入る松江テルサの建物は撤去し、一部機能を一畑跡地にできる複合施設に移す。2000年に完成した松江テルサは老朽化に伴う雨漏りなどが発生し、修繕費として年間3千万~5千万円を支出し、市の財政を圧迫していた。
上定昭仁市長は素案で打ち出した複合施設について、「一つに機能集約をした方が、効率的に使える。市民に必要な機能が維持されるように取り組みたい」と述べた。
素案は、駅前広場の整備やバスターミナルの拡充、アクセスの悪さなどを踏まえ駅前地下駐車場の廃止も盛り込んだ。観光客らの街歩きを想定した大橋川方面への動線確保も示した。
松江駅前デザイン会議は23年12月にデザイン案の策定に着手。今年9月17日まで募る市民意見を踏まえ、11月までに最終案を決める。その後、各事業について具体的な整備内容や開始時期の検討を始める考え。
(佐々木一全、多賀芳文)