経済発展だけでなく、心の豊かさの基準「国民総幸福量(GNH)」の追求を国是とするブータンは、他国から「幸せの国」と呼ばれている。一方で近代化に伴い、地方から都市部への人口流出という現実に直面する。島根県海士町の隠岐島前高校が取り組む「地域課題解決型学習」にブータン政府が注目しているのは、まさにその点に背景がある。

共に探る持続可能な「幸福」~隠岐島前高・訪問同行記(上)

外国への人口流出増

 GNHは、同国のジグミ・シンゲ・ワンチュク第4代国王が1970年代に提唱した。持続可能な経済成長と開発▽文化遺産の保護と伝統文化の継承・振興▽自然環境の保全▽よき統治―を4本柱に全ての政策が立案されてきた。

分厚い英語で書かれた教科書を使って勉強するブータンの高校生=チュカ県、ゲドゥ高校


 ブータンでは地方でもネットやスマートフォンが普及。動画投稿アプリやサイトの閲覧に規制はなく、誰でも気軽に外国の文化や情報に触れることができる。

着飾るブータンの若者たち=ティンプー


 首都ティンプーには、韓流ファッションに身を包んだ若者が往来する。外国資本の流入に規制があるため世界的なチェーン店は見かけないが、街の各所に〝ユニクロ〟の店があり、ちょっとしたブームとなっている。地元住民は「タイや日本で新品のユニクロ製品を買い付けた個人商店主が、勝手にユニクロの看板を掲げている」といい、国是とは裏腹にファストファッションが浸透している様子が垣間見える。...