元警察庁長官 金高雅仁氏
元警察庁長官 金高雅仁氏

 山陰中央新報社の米子境港政経クラブと島根政経懇話会の定例会が15、16の両日、米子、松江両市であった。元警察庁長官の金高雅仁氏(67)が「日本の治安はいまも世界一か」と題して講演し、東京五輪について「世論が割れている特殊事情があり、単独テロの可能性は排除できない」と警鐘を鳴らした。要旨は次の通り。

 「日本の治安は世界一」と紹介したのは、社会学者エズラ・ヴォーゲルの著書『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(1979年刊)。高度成長期、犯罪発生件数と発生率は戦後最低だった。急激な経済成長や人口増に伴う都市化は犯罪増につながるという世界の常識を、日本は覆した。

 ただ治安は犯罪統計で測れない。国民が肌で感じる「体感治安」という指標がある。2000~05年は一気に20ポイント悪化した。オウム真理教のテロなど重大事件が影響し、不安が募った。

 警察庁は1980年代、シンガポールの交番システム導入を支援した。市民と警察が連携し、地域の治安を守るという日本独特の交番システムを手に入れて以降、同国の治安の良さは世界最高水準にある。この10年で警察に寄せられる相談は事件件数を上回る。犯罪の未然防止が重要になっており、交番の果たす役割は増している。

 DNA型鑑定など科学捜査は万能ではない。取り調べで黙秘や否認が多くなり、首謀者が表に出ない組織犯罪では真相解明の糸口が見つけにくくなっている。通信傍受や会話傍受など捜査のグローバルスタンダード化を急ぐべきだ。

 五輪テロは1972年のミュンヘン大会と96年のアトランタ大会の2回。警備や監視が手薄な「ソフトターゲット」で起こった。東京五輪は開催の是非を巡って世論が割れており、単独テロの可能性が排除できない。世界一の治安にふさわしい安全な大会になるよう願っている。

      (山根行雄)