【隠岐の島】島根県隠岐の島町の海岸で昨夏に瀕死(ひんし)の状態で見つかった片脚のアカウミガメが17日、町沖の日本海に返された。漁網が絡み付いた右前脚を失ったが、治療、リハビリを経て、自力で海を泳げるまでに回復した。ウミガメ救出をきっかけに海洋保護への関心が盛り上がり、住民がイベントを開いて海のごみ削減へ機運を高めた。
アカウミガメは雌の成体。昨年8月の発見時に右前脚が壊死(えし)していた。揺すっても体が全く動かない状態で、住民やダイビング施設の関係者らが協力して救出。「生きてほしい」との願いから「Live(リブ)」と名付けられた。
昨年10月から神戸市の須磨海浜水族園で治療やリハビリを続け、右前脚がないハンディキャップを抱えながら独自の泳ぎ方を身に付けた。人工浜で自ら餌を取るまで体力が回復。必死に後ろ脚を動かす泳ぎ方はぎこちないが、水面にスムーズに浮上できるため、救出された隠岐の島町から海に返すことにした。
17日は隠岐の島町津戸地区で海の環境保全を考えるワークショップや、海岸ごみ拾い大会があり、ウミガメの保護活動に賛同した住民が気持ちを新たにした。
津戸漁港でセレモニーがあり、リブが親子連れ70人に元気な姿を披露。救出に携わった西郷中学校2年の高梨蒼大さん(13)が「皆さんの協力のおかげ。元気に海を泳いでほしい」と別れの言葉を述べた。
沖合3キロの海で船から放たれると、リブは波間を悠々と泳ぎだし、やがて姿を消した。受け入れに協力したダイビング施設従業員、安部由起さん(42)=隠岐の島町都万=は「海を大切にする機運が子どもへと受け継がれていってほしい」と願った。 (森山郷雄)














