南アフリカサッカー男子代表の足取り
南アフリカサッカー男子代表の足取り

 東京五輪のサッカー男子の南アフリカ代表で3人の新型コロナウイルス陽性者が出た問題で19日、濃厚接触者が21人に上ることが発覚した。大半が選手で、目前に迫った22日の1次リーグ初戦の日本戦(味の素スタジアム)への影響が懸念される。選手の出場が認められるかどうかは、今後の検査での陰性などが条件となる。ただ、当初からコロナ対策の規則集「プレーブック」での濃厚接触者の扱いは不透明な部分が多く、開幕前にいきなり不安が的中した形。今後の大会運営に暗雲が垂れ込めた。

 

 南アのサッカー協会や同国オリンピック委員会によると、大会のルールを順守し、チームは全ての選手、スタッフが渡航前に2週間隔離。毎日の健康チェックに加え、出発前96時間以内に実施した2度の検査でも陰性だったという。日本に到着したのは14日。空港での検査結果も陰性だった。しかし、選手村内での定期検査でスタッフ1人の陽性が17日に発覚。続いて選手2人の陽性も18日に明らかになった。

 南アは今年4月ごろからインド由来で感染力が強いデルタ株が広がり、6月末には感染者の88%で確認された。現在は過去最悪の感染第3波のさなかにある。政府は6月28日からロックダウン(都市封鎖)を強化してきたが、今月18日発表の新規感染者数は依然1万人を超え、検査件数に対する陽性率は29・3%と極めて高い。

 

検査すり抜けか

 感染経路は不明だが、同国選手団の医療責任者は「南アの検査で陰性で、東京で陽性となることはあり得る。潜伏期間だったことを示唆している」との見解を示す。既に感染していたが、空港など水際での検査をすり抜けた可能性があるとの見方だ。

 組織委は19日、前日までに海外から2万2千人の大会関係者が来日したと公表。事前合宿分を除き、陽性が判明したのは計26人で、0・1%程度。「陽性率は、それ以外の場所と比較して特段高いわけではない」(高谷正哲スポークスパーソン)との認識だが、何重もの検査や健康管理を経て入国しても、感染を捕捉できない事実は重い。

 南アは来日後もマスク着用や人同士の距離を取るなど感染対策を順守していたが、相当数の濃厚接触者の認定は避けられなかった。今後も同様のケースが続出し、大会が立ちゆかなくなる可能性も否定できない。

 

出場容認は疑問

 難しいのは今後の対応だ。五輪では濃厚接触者にも、競技参加の道は開かれている。組織委などは先週、競技開始前6時間以内の検査で陰性なら出場を認めるとの新たなルールを示したが、感染症の専門家からは疑問の声が上がる。

 国際医療福祉大の松本哲哉教授(感染症学)は「直前の検査で陰性ならば感染リスクは減らせる。だが、絶対大丈夫かと言えばそうではない」と指摘。本来ならば、中止などが望ましく「通常から考えれば強行策」と表現した。

 22日の試合が開催された場合、南アの出場選手は大半が濃厚接触者であるケースも十分想定される。後日になってメンバーの感染が判明したり、日本チームに陽性者が出たりすれば、大混乱に陥ることは必至。コロナ禍の開催の難しさが早くも鮮明になった。