講演する鮫島浩氏∥松江市朝日町、松江エクセルホテル東急
講演する鮫島浩氏∥松江市朝日町、松江エクセルホテル東急

 山陰中央新報社の島根政経懇話会、米子境港政経クラブの定例会が6、7の両日、松江、米子両市であった。政治ジャーナリストの鮫島浩氏(53)が「激動の秋から来年夏へ政治の激動は続く~石破茂政権の行方~」と題して講演した。要旨は次の通り。

 小泉進次郎元環境相が立候補した時点で、誰も石破首相が自民党総裁選に勝てると思っていなかった。石破氏自身も負けると思い、総裁選で早期の衆院解散に否定的な発言をしたのだろう。小泉氏が失速し、躍進した高市早苗前経済安全保障担当相は保守的な思想が強いことへの懸念もあり、保守に偏らない石破氏が「消去法」で選ばれた。

 党内基盤が弱い石破氏は森山裕幹事長が幹事長を受ける条件にした早期解散に乗るしかなく、首相就任後、解散時期や金融政策などで言動がぶれた。派閥の裏金事件に関係した議員の多くを中途半端に公認し、対抗馬も立てず、自民の議席は大幅に減り、自民、公明党の与党は過半数割れした。

 過半数を回復させる方法は連立の枠組みを自公から広げるか、来夏の参院選と合わせて衆院選に踏み切る衆参ダブル選挙をするかだ。いずれにしても今回の衆院選で負けた石破政権では難しく、来夏に石破氏が首相の可能性はほぼない。来春の来年度予算成立後に退陣し、現時点では茂木敏充前幹事長、林芳正官房長官が有力候補だ。

 野党は50議席増の立憲民主党が躍進と報道されるが、政権交代できず敗北だ。比例票は大惨敗の前回選から7万票増にとどまった。議席を増やした国民民主党とれいわ新選組は、有権者の関心を調査し、消費税減税を訴え、動画サイトや交流サイト(SNS)で新たな層に浸透したのが特徴だ。両党が伸びた事実を重視しないと今後の政局を見誤る。

 キャスチングボートを握った国民が勢いを維持するためには政治資金規正法の再改正や「年収103万円の壁」、ガソリン税を一部軽減する「トリガー条項」の凍結解除の公約を来年度予算編成までの早期に実現しないといけない。石破政権が存続する策があるとすれば、消費税減税に代わる政策的な「贈り物」をして国民を来年3月までに連立政権に入れ、抱え続けることだろう。 (堀尾珠里花)