鳥越 規央 氏
鳥越 規央 氏

 山陰中央新報社の島根政経懇話会、米子境港政経クラブの定例会が17、18の両日、米子、松江両市であり、統計学者の鳥越規央氏(55)が「大リーグ、プロ野球に学ぶ勝てる組織の作り方」と題して講演した。チームや企業が強くなるには、フロントスタッフが統計を活用する能力を向上させることが不可欠と説いた。要旨は次の通り。

 統計は経験則や勘からくる「思い込み」を排除してくれる。データを正しく集計することで、真実が見えてくる。

 例えば、野球で無死満塁だと点が入りにくい、という話を聞いたことがあるかもしれないが、本当はどうか。イニングが終了するまでに1点以上入る確率を示す得点確率を見てみると、2死走者なしから無死満塁までの全24パターンの中では、無死満塁は83・7%と最も高い。

 ではなぜ、野球を見ている人々は点が入りにくいということがあるのか。これは逆にいうと、残りの16・3%は点が入らない。野球の試合を多く観戦している人は、点が入った8割を見ているにもかかわらず、悔しさから点が入らなかった2割の方が頭に記憶に残る。その結果として、点が入りにくいという思い込みをしてしまう。

 データでの評価を投手に当てはめてみる。投手は勝ち星という指標で評価されることが多いが、昨年の日本プロ野球の成績で、中日の柳裕也投手は防御率2・44、4勝11敗。これは味方が打ってくれなかった試合が多かったからで、先発投手が6回以上投げて自責点3以内に抑えた際に記録される「クオリティースタート」は17。これはプロでも上位の成績で、今季の年俸アップにもつながった。

 統計は球団運営でも重要になる。DeNAの横浜スタジアムは、駅のすぐそばで立地は大変良かったが、かつては来てもらう努力が足りていなかった。運営母体が変わって以降は観客の男女比や年齢層などを分析し、データ化した。こうした努力もあり、2011年は観客動員数が110万人だったが、19年には228万人まで伸ばした。

 島根県内のスポーツ施設では、バスケットボール男子Bリーグ1部(B1)・島根スサノオマジックのホームアリーナ・松江市総合体育館などがある。データを集め、こうした場所をスポーツ以外で活用してもらう仕組みが必要だ。BリーグやJリーグのチームがある長崎県では、アリーナや宿泊施設などが一体化した「長崎スタジアムシティ」が開業予定。今後、会場を拠点としたまちづくりが各地で進んでいくとみられる。

(清山遼太)