今年のノーベル文学賞は、韓国のハン・ガン(韓江)に決まった。アジア初の女性作家の受賞である。ハン・ガンの文学は、過去を生き延びさせるための切なる言葉だ。

 祈りの共鳴

 2021年に発表された「別れを告げない」では、済州島での民衆蜂起が弾圧され、軍や警察に島民が虐殺された1948年の「4・3事件」を描いた。

 言葉にとって、壊れやすい記憶を保存す...