【出雲】戦時中に、戦闘機の燃料用の松やにを採るため、出雲市大社町の神門通りの松につけられた採取痕の写真展が、出雲市佐田町反辺のスサノオホールで開かれている。戦後76年を迎え戦争の記憶が薄れる中、身近な所にある痕跡から、国民を巻き込んだ戦争の実態を伝えている。
松の写真は、戦争と普通の人たちのつながりをテーマに、写真を撮り続ける出雲市斐川町沖洲の写真家・高嶋敏展さん(48)が約15年前から撮影しており「戦争のてざわり」と題して展示した。
高嶋さんの調査では、神門通りにある65本の松に傷痕を確認。戦闘機の燃料を作る松やにを採るため、樹皮をはいだ幹にV字形に切れ込みが入れてある。
傷痕は、長い年月で薄くなっているが、今も無数の切れ込みが残り、物資不足が続く当時の厳しい戦局を物語っている。
会場では高嶋さんが、年間の島根県の松やに供出割り当てが全国2位の1020キロリットルだったことなどを、来場者に説明。高嶋さんは「戦争の記憶が遠くなる中、身近な所にも痕跡が残っている。存在を知ってもらうことで、平和を考えるきっかけにしてもらえれば」と話した。
展示は、高嶋さんからホール近くに佐田地区の傷痍(しょうい)軍人と妻の会が建立した平和の碑の存在を聞いた、NPO法人スサノオの風が「戦争で刻まれた思い」をテーマに開いた。8月15日まで。2、10日は休館日で、2日午前9時から、石碑の碑文を紙に写し取るワークショップがある。
(三原教史)













