中国で、雪の積もったのき先に塩漬けの魚をつるす人=2008年1月(新華社=共同)
中国で、雪の積もったのき先に塩漬けの魚をつるす人=2008年1月(新華社=共同)
宇宙日本食のしょうゆラーメンを食べる油井亀美也(ゆいきみや)宇宙飛行士(JAXA/NASA提供)
宇宙日本食のしょうゆラーメンを食べる油井亀美也(ゆいきみや)宇宙飛行士(JAXA/NASA提供)
サバの缶詰を作る様子。サバの重さを量り(上)、調味えきを入れ(中)、機械でふたをします(下)(マルハニチロ提供)
サバの缶詰を作る様子。サバの重さを量り(上)、調味えきを入れ(中)、機械でふたをします(下)(マルハニチロ提供)
油(左)が酸化すると、色は濃(こ)くなります(右)。これを劣化(れっか)といいます(さいたま市健康科学研究センター提供)
油(左)が酸化すると、色は濃(こ)くなります(右)。これを劣化(れっか)といいます(さいたま市健康科学研究センター提供)

          
中国で、雪の積もったのき先に塩漬けの魚をつるす人=2008年1月(新華社=共同)

          
宇宙日本食のしょうゆラーメンを食べる油井亀美也(ゆいきみや)宇宙飛行士(JAXA/NASA提供)

          
サバの缶詰を作る様子。サバの重さを量り(上)、調味えきを入れ(中)、機械でふたをします(下)(マルハニチロ提供)

          
油(左)が酸化すると、色は濃(こ)くなります(右)。これを劣化(れっか)といいます(さいたま市健康科学研究センター提供)

 どうしたら好きな食べ物をなが~く楽しめるだろう。そんな疑問(ぎもん)から、世界各地で人々はさまざまな知恵(ちえ)をしぼってきました。そうして生まれたのが「保存食(ほぞんしょく)」です。

 そもそも、食べ物が食べられなくなってしまう理由は大きく二つあります。一つは「腐敗(ふはい)」です。食べ物の栄養をもとに微生物(びせいぶつ)がどんどん増(ふ)えてしまっている状態(じょうたい)で、見た目やにおい、味が変化したり、食中毒(しょくちゅうどく)の原因(げんいん)になったりします。

 もう一つは「酸化(さんか)」です。特に、油を使った料理は空気中の酸素(さんそ)が油とくっつく酸化によっておいしくなくなり、体調をくずす原因になることもあります。

 

干す・漬ける・発酵

 こうした「腐敗」や「酸化」を防(ふせ)ぐために、昔の人々はたくさんのくふうを重ねてきました。例えば、微生物が生きるために必要な水を取り除(のぞ)く「干(ほ)す」方法です。切り干(ぼ)し大根や高野豆腐、乾麺(かんめん)が主な例です。

 甘納豆(あまなっとう)や塩ザケのように、塩や砂糖(さとう)に「漬(つ)ける」方法もあります。水分を食材からぬくことで、微生物に水分を使わせないようにしています。微生物の一種である乳酸菌(にゅうさんきん)を使った「発酵(はっこう)」という方法でも、他の微生物の働きを抑(おさ)えることができます。ヨーグルトやキムチなど、冷蔵庫(れいぞうこ)には発酵食品がたくさん見つかりますね。

 

空気にふれない工夫

 一方、科学の力で可能(かのう)になった保存技術(ぎじゅつ)も。代表的なのは、缶詰(かんづめ)や真空パックです。水分や空気が外から入らないように密封(みっぷう)することもできるようになりました。

 他にも、お菓子(かし)などの容器(ようき)の中に「食べられません」と書いてある小袋(こぶくろ)、見たことはありませんか? 「脱(だつ)酸素剤(ざい)」と呼(よ)ばれ、文字通り、食べ物の容器の中にある酸素を奪(うば)い取ることで「酸化」を防ぐ大事な役目を果たしてくれるのです。

 (本田隆行(ほんだたかゆき)・サイエンスコミュニケーター)

 

フリーズドライは宇宙食にも

 保存食としてだけでなく、手軽に本格的(ほんかくてき)な風味を楽しめることから、私(わたし)たちの食生活の中に定着しているのが、フリーズドライ食品です。

 フリーズドライとは、食べ物の中の水分を凍(こお)らせてから、一気に真空乾燥(かんそう)させる技術。味や栄養をそこなうことなく、お湯さえあれば元の状態(じょうたい)へと戻(もど)すことができます。

 長期間の保存に向いているだけでなく、とても軽くなるので、これまで持ち運びが難(むずか)しかったような場所や、急に食べ物が必要になるような場面でも、安心して食事ができるようになります。大雨や地震(じしん)などの災害(さいがい)にそなえて、非常食(ひじょうしょく)として保存しているという人も多いのではないでしょうか。

 フリーズドライ技術は、宇宙食(うちゅうしょく)にも活用されています。缶詰(かんづめ)の製造(せいぞう)法を応用(おうよう)して、フィルムパックに入れた食べ物を殺菌処理(さっきんしょり)する「レトルトパウチ技術」と合わせて、宇宙飛行士(ひこうし)がカレーやラーメンといったさまざまな食事を楽しめるようになったのは、保存技術開発のたまものなのです。

 

略歴

 ほんだ・たかゆき 鳥取県三朝(みささ)町出身で、1982年生まれの「科学とあなたをつなぐ人」。神戸(こうべ)大学大学院時代の専門(せんもん)は地球惑星(わくせい)科学でした。日本科学未来館勤務(きんむ)を経(へ)て国内でもめずらしいプロのサイエンスコミュニケーターとして活動中。