吉村郁也氏
吉村郁也氏

 山陰中央新報社の島根政経懇話会、米子境港政経クラブの定例会が21、22の両日、松江、米子両市であり、グローカル・ビジョン(熊本市)代表取締役の吉村郁也氏(73)が「ラフカディオ・ハーン作品に学ぶ危機管理」と題して講演した。要旨は次の通り。

 東日本大震災で大津波が発生し、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の「A Living God(生神様)」を原作とする「稲むらの火」が注目された。1854年の安政南海地震で津波が起きた際、刈り取った稲の束に火を付けて周囲に危険を知らせ村人を救った、実在した人物の物語だ。戦前に小学校の国語教科書に採用され、防災教育の名作となった。

 ハーンは共助の精神と自己犠牲の精神に感動し、世界に伝えたいと、この作品を書いたのではないか。日本のどこで、何が起きるか分からない。ハーンが残した教材を活用してほしい。

 「自助・共助・公助」はよく聞く言葉。大災害の発生時、自治体職員や警察官、自衛官も被災するため、公助に期待できるのは3日目から。それまでは自助・共助が重要になる。実際に、阪神淡路大震災では生存者の8割以上が家族や近所の人に助けられた。

 「向こう三軒両隣」という言葉はあまり使われなくなったが、共助の上で大切な精神だ。災害時、1人暮らしの高齢者が避難する際は遠く離れて暮らす息子より、隣近所の人が頼りになる。

 ハーンを魅了した「日本の心」や日本人の精神文化の高さを日々思い出し、考えていくべきだ。私は「備えあれば憂いなし」に「憂いなければ備えなし」と付け足している。防災に少しでも問題意識を持ったら、アクションを起こさないといけない。どう行動に結び付けるかが大事だ。(山口春絵)