出雲市多伎町口田儀の多伎文化伝習館で14日、全山陰書道連盟副会長などを務めた故山本煮石(しゃせき)さんと、山本さんから学んだ人たちの作品を集めた書道展が始まり、美しく力強い作品に来館者が見入っている。16日まで。
山本さんは1912年に福岡県で生まれ、19年に父親の故郷の多伎町に移住した。小中学校の教員を務める傍ら、島根県内の書道団体で中心的な役割を果たし、多伎町では書道グループ「黙耀(もくよう)会」を立ち上げ、会は今も続く。
書道展は山本さんの功績を伝えようと、弟子たちが山本さんの遺作と、自分たちの作品を持ち寄って開催した。約30点が展示され、このうち11点が山本さんの作品。柿本人麻呂の詠んだ歌を書にした作品は、かなが流れるような美しさで目を引く。赤い和紙に「壽昌」と大書した一風変わった書もある。
「ヤメーカネ その一言に 奮い立ち 涙浮かべて 筆持つ夕暮れ」と、山本さんとの思い出を短歌にした門下生の書もあり、作品の前で笑みを浮かべる人の姿もあった。
黙耀会の会員で、自らも山本さんに学んだ岡田耕一さん(77)は「なかなか厳しい先生だったが、それがあって今の自分がある」と、感慨深そうに山本さんの書を見つめた。(佐野卓矢)