島根大法文学部考古学研究室の准教授・岩本崇(50)が今年5月、考古学振興に寄与した研究者に贈られる「浜田青陵賞」を受賞した。賞は「考古学の芥川賞」といわれる。専門とする三角縁神獣鏡(さんかくぶちしんじゅうきょう)の研究で実物を基に断面図を作成し続け、図と文様の関係を追究。「編年」を組み立てた功績が高く評価された。考古学は一見、研究し尽くされた対象でも、多様な視点次第で新発見がある。そんな信念で貫く研究姿勢と情熱、学問の魅力に迫る。

 (interviewer・森みずき)

#(中)日韓古墳の比較研究が転機
#(下)出雲の古墳に独自の視点
 

「国宝級」の価値

 人はすごいものを見たとしても、意外にすぐ冷静になるらしい。特に発掘現場の人々は。2022年12月、奈良市の富雄丸山古墳でもそうだった。

 ちょうど大阪出張中の岩本に奈良市の調査関係者から連絡が入った。「明日取り出すから来てほしい」。古墳で見つかった銅鏡を取り出す作業が...