中国の内陸部で発生した大規模(だいきぼ)な黄砂の嵐=2013年3月(CNSPHOTO=共同)
中国の内陸部で発生した大規模(だいきぼ)な黄砂の嵐=2013年3月(CNSPHOTO=共同)
花粉光環(「すごすぎる天気の図鑑(ずかん)」より、荒木健太郎(あらきけんたろう)さん/KADOKAWA提供)
花粉光環(「すごすぎる天気の図鑑(ずかん)」より、荒木健太郎(あらきけんたろう)さん/KADOKAWA提供)
粒子の大きさくらべ
粒子の大きさくらべ
黄砂のためスカーフで顔をおおう女性=2013年3月、中国・北京(ぺきん)市内(共同)
黄砂のためスカーフで顔をおおう女性=2013年3月、中国・北京(ぺきん)市内(共同)
気象庁のホームページでは、黄砂の飛来予測(よそく)が見られます(気象庁提供)
気象庁のホームページでは、黄砂の飛来予測(よそく)が見られます(気象庁提供)

          
中国の内陸部で発生した大規模(だいきぼ)な黄砂の嵐=2013年3月(CNSPHOTO=共同)

          
花粉光環(「すごすぎる天気の図鑑(ずかん)」より、荒木健太郎(あらきけんたろう)さん/KADOKAWA提供)

          
粒子の大きさくらべ

          
黄砂のためスカーフで顔をおおう女性=2013年3月、中国・北京(ぺきん)市内(共同)

          
気象庁のホームページでは、黄砂の飛来予測(よそく)が見られます(気象庁提供)

 風に乗って運ばれてくる小さな粒(つぶ)「粒子(りゅうし)」。春の訪(おとず)れをつげるのが「花粉(かふん)」と「黄砂(こうさ)」です。

 スギやヒノキ、石の粒

 花粉は、種で増(ふ)える植物にとってなくてはならない粒子です。1年を通していろいろな植物が飛ばしているのですが、それでも「春=花粉の季節」というイメージが強いのは、寒さがピークをこえるころから花粉を飛ばし始めるスギやヒノキの花粉の量を気にする人が多いからでしょう。

 花粉の直径は1粒あたり0.02~0.05ミリメートル。一つ一つは飛んでいる姿は目に見えませんが、多く舞(ま)う日に太陽を建物の角などで隠(かく)してみてください。太陽の光が花粉の粒に曲げられ、うっすら虹色(にじいろ)の輪ができる「花粉光環(こうかん)」という現象(げんしょう)が見られることがありますよ。

 一方、黄砂は車やベランダに黄色く降(ふ)り積もる粒子です。「砂(すな)」といっても砂場の砂よりも、さらには花粉よりも小さく、直径は1粒あたり0.01ミリメートルより小さい石(鉱物(こうぶつ))の粒です。東アジア内陸のかわいた地域(ちいき)で、春になると起こりやすくなる砂嵐(あらし)で舞(ま)い上がった大量の粒子が、強い西風に乗って海をこえて日本までやってくるのです。

 目のかゆみや鼻水が

 こうした粒子は、私(わたし)たちの健康にさまざまな影響(えいきょう)をおよぼします。花粉は無害のはずですが、人によってはなぜか身を守ろうと体が過剰(かじょう)反応(はんのう)を起こしてしまいます。いわゆる「花粉症(しょう)」です。特に、スギ花粉症の患者(かんじゃ)数は国民の3分の1におよぶと言われ、症状(しょうじょう)が重くなって働きにくくなるといった経済(けいざい)的な損失(そんしつ)も1日あたり2000億円をこえるという試算も出されています。

 黄砂は外に干(ほ)した洗濯物(せんたくもの)がよごれたり、視界(しかい)が悪くなって交通事故(じこ)が起きやすくなったりすることも。目のかゆみや鼻水などアレルギー症状の悪化との関連も報告(ほうこく)され、原因(げんいん)などについて研究が進められています。

 (本田隆行(ほんだたかゆき)・サイエンスコミュニケーター)

 

 ほんだ・たかゆき 鳥取県三朝(みささ)町出身で、1982年生まれの「科学とあなたをつなぐ人」。神戸(こうべ)大学大学院時代の専門(せんもん)は地球惑星(わくせい)科学でした。日本科学未来館勤務(きんむ)を経(へ)て国内でもめずらしいプロのサイエンスコミュニケーターとして活動中。

 

 

 気象予報のチェックやマスク、眼鏡で対策

 花粉も黄砂も、粒子1粒はとても小さいので、いたるところに入りこんできてしまいますが、私たちができる対策(たいさく)はたくさんあります。

 どのぐらい飛んで来るのか日々気になる人におすすめは予報(よほう)のチェックです。花粉も黄砂も、日本(にほん)気象(きしょう)協会(きょうかい)や気象庁(ちょう)のホームページで確認(かくにん)できます。「今日はたくさん飛びそう」と示(しめ)されていたら、外出時にマスクや眼鏡(めがね)をすると安心。目や鼻に粒子が触(ふ)れるのをできるだけ避(さ)けることが大切だからです。

 帰宅(きたく)したら、家の中に粒子を持ちこまないくふうも必要です。家の前で、身に着けていた帽子(ぼうし)や上着だけでなく、髪(かみ)の毛もバサバサとはらいましょう。もし粒子が付いても、すぐにはらい落とせそうなツルツルとした素材(そざい)の衣服を選ぶ方法もありますね。

 家の中に入ったら、手洗(あら)い、うがいを忘(わす)れずに。顔を洗う、お風呂(ふろ)に入る、洗濯物(せんたくもの)を家の中に干(ほ)すといった習慣(しゅうかん)も取り入れられると良いですね。