短歌 安部歌子選
入船や出船の様を近く見し老舗旅館の解かれて淋し 隠岐の島 高橋 恭子
【評】「近く見し」で旅館は入船、出船が近々と見える所に在ったことが、うかがえる。幼い頃から見てきた旅館も時代の流れと共に寂れ解かれてしまった。その事実のみで寂しさは十分伝わるので結句に淋しと念を押すのは避けたい。
白鳥の先発隊が約十羽能義の平野の落穂ついばむ 安 来 鐘築 京子
【評】「約十羽」の数詞も効果的で、落穂をついばむ穏やかな光景が広がる。しかしそれは厳しい冬の前触れであることを作者も思い読む者に...












