ー新本館棟が完成し、2024年10月に診療が始まりました。
床面積が約2倍になり、MRIなど最新の検査機器も多く更新しました。個室を増やし、患者のプライバシー保護や感染予防を強化しています。新たに導入した通院支援アプリは、診察の案内や後払い決済に対応し、通院の利便性が格段に上がるものと思います。邑智郡内唯一の救急告示病院としての体制態勢整備をさらに進めていきます。

ー23年度末時点で13年連続黒字という健全経営を続けています。
13年に職員1人当たりの生産性を数値化する独自のシステム「自立プロジェクト」を導入しました。部署ごとの生産性や収益を算出するため職員一人一人が経営者目線で経費や効率を工夫する風土が根付きつつあります。少人数で生産性を上げるために、部署の垣根を越えて助け合うことも少なくありません。職員の郷土愛が強いことも要因の一つかもしれません。
 

 

ー郡内の民間診療所が閉院したことに伴い、付属市木診療所として業務を承継しました。
公立病院の使命である地域医療の維持に向け検討を重ね、人口規模や患者の数から承継ができると判断しました。多くの利用があり、住民から安堵(あんど)の声をいただいています。一方、今回のような事態は今後も全国で起こります。地域の中核となる医療機関がしっかりと医師を確保し、医療サービスが手薄な地域を補完する体制態勢づくりが重要です。へき地医療の先進的なモデルとなるよう、気を引き締めて運営に当たっていきます。

ー使命である地域医療の維持に向けた思いをお聞かせください。
公立病院が地域医療を守るには、財政面で自治体の「お荷物」にならないよう、職員一丸で努力を続けることも不可欠です。病院機能を十分に発揮するため、職員一人一人による経営改善の工夫に加え、医師確保にも注力したいと思います。大病院から離れた位置にある当院だからこそできる手法で、地域の中核病院としての責務を果たしていきます。

 

公立邑智病院は中山間地にある98床の小規模へき地病院です。都市部の大規模病院から離れているので、地域医療を完結する使命があります。

限られた人材で職員は自分の持ち場(専門性)のみに固執せずタスクシフトで助け合います。ふだんから職員同士の風通しを良くして、住民の期待に応える優しい病院を目指しています。

山口清次(73歳)広島県生まれ。2021年に現職に就任。
1975年岐阜大学医学部卒業。同大学小児科研修医、岐阜市民病院、都立豊島病院等を経て、1987年岐阜大学講師。1993年島根大学(旧島根医大)小児科教授、2016年定年退職。

専門は遺伝生化学、小児保健。厚労省研究班班長として全国の新生児マススクリーニング事業にタンデムマス法を導入した。趣味は歴史。