島根県内の公立小、中学校では近年、新入生が0人の学校がある。2025年度は分校を含む小学校9校、中学校2校で新入生がいなかった。県内各地で少子化が加速しており、小規模校を残すべきだと提言してきた識者も「ステージが変わっている」と学校を巡る厳しい現実を指摘する。
県内には市町村立の小学校が187校、中学校が90校、義務教育学校が2校ある。新入生がいなかったのは来待小大野原分校(松江市)▽河南中若松分校(出雲市)▽神戸川小若松分校(同)▽小野中(益田市)▽五十猛小(大田市)▽比田小(安来市)▽山佐小(同)▽布部小(同)▽吉田小(雲南市)▽志々小(飯南町)▽阿須那小(邑南町)-だった。他にも新入生が1人にとどまった学校が小学校5校、中学校1校あった。
児童生徒数の減少に伴い閉校する学校が25年度も複数ある。年度末に五十猛小や山佐小などが閉校するほか、奥出雲町では旧仁多町の小学校5校が26年度に1校に統合する。
学校再編の議論は各自治体で持ち上がっている。現在の小学校17校を9校に、中学校5校を4校に再配置する基本計画がある安来市の遠藤浩司教育部長は「多様な学びの場を確保するには一定の規模が必要」と説明し、地域や保護者との協議を進める。
小規模校で学ぶメリットやデメリットにはさまざまな意見がある。ただ、在学する児童生徒がいなくなれば学校が成り立たない。山陰両県の自治体で再編議論の審議委員を多く務めた島根大教育学部の作野広和教授(農村地理学)は「今までは人数が少なくなる状況だったが、いなくなる段階に入ってきた。背景の根本は少子化で対策が難しい」と話す。
市町村別で小学・義務教育学校の新入生が最も少なかったのは知夫村の5人で、海士町11人、飯南町13人、川本町14人と続いた。最も多かったのは出雲市の1477人で、松江市は1469人だった。(勝部浩文)