国道9号に倒れた街路樹を支える警察官ら=9日午前9時26分、出雲市中野美保北1丁目
国道9号に倒れた街路樹を支える警察官ら=9日午前9時26分、出雲市中野美保北1丁目
強風にあおられる傘を持つ歩行者=松江市朝日町
強風にあおられる傘を持つ歩行者=松江市朝日町
国道9号に倒れた街路樹を支える警察官ら=9日午前9時26分、出雲市中野美保北1丁目
強風にあおられる傘を持つ歩行者=松江市朝日町

 中国地方に上陸した台風9号は、山陰両県に大雨をもたらした。7月上旬の豪雨災害から、最高気温が40度に近づく猛暑を経て、再び大雨。住民は極端な気象変動に、疲労の色を濃くした。

 広島県境に近い浜田市金城町波佐は、8日午前8時の降り始めから9日午前11時までに288ミリの雨を記録。平年の8月1カ月を超える雨量で周布川上流の水位が上昇した。地区内の波佐まちづくりセンターには、最大14人が避難した。避難者への対応に当たった市職員の岡田憲治さん(35)は「雨は激しく、とにかく長かった」と話した。

 2018、20年に一部で氾濫した1級河川の江の川流域でも緊張が高まった。

 支流の玉川(江津市桜江町市山)が増水し、2世帯が床下浸水。近くで飲食店を経営する田代和秋さん(69)は、自らには被害はなかったが「安心できなかった」と吐露した。

 市山は13年にも浸水被害があり、管理する島根県が川を拡幅する計画。田代さんは「早く工事を進めてほしい」と願った。

 同じく県西部の1級河川・高津川は、一時、氾濫警戒情報が発令。堤防から約200メートルに住む、無職の蘇鉄照博さん(68)=益田市中島町=は「昨夜から濁流の音が聞こえた」と避難所に身を寄せた。安全を確認し「氾濫しなくてよかった」と胸をなで下ろした。

 暴風を伴う雨は島根県東部でも猛威を振るった。

 午前10時5分に最大瞬間風速34・7メートルを記録した松江市では、市消防本部などによると、市内の複数箇所で倒木や屋根の破損などの被害が発生。松江市学園南1丁目のくにびきメッセ近くでは、強風で信号機がねじれ、付近の交通に影響が出た。

 鉄道や空路など公共交通機関も軒並み運行を見合わせた。JR松江駅の改札前で運休情報を確認していた山野一夫さん(76)=松江市古志原4丁目=は寺の住職が来る米子市の実家に向かう予定といい「どうしようもない」と諦めた様子だった。 (取材班)