送風ダクトからの冷風に当たりながら作業する従業員=松江市宍道町佐々布、オーエム金属工業
送風ダクトからの冷風に当たりながら作業する従業員=松江市宍道町佐々布、オーエム金属工業

 熱中症による就業中の死亡事故が増加しているのを受け、6月に企業の熱中症対策を義務化する改正労働安全衛生規則が施行される。罰則付きで企業の対応を促す規則改正に合わせ、島根県内の企業も大型冷風機や体温を下げるファン付き作業服の導入、熱中症患者が出た場合の応急処置や最寄りの病院への連絡体制のマニュアル作成などの対策を急いでいる。

 熱中症による全国の死亡事故は2012年の21件から、23年には31件に増えた。島根労働局によると、23年の島根県内事業所での熱中症の発生件数も前年比47・9%増の108件を数えた。こうした実態を踏まえた改正規則は、重症化を防ぐための体制整備や手順作成、労働者への周知などを義務化。違反すると6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性がある。

 船舶や工作機械部品などを製造するオーエム金属工業(松江市宍道町佐々布、従業員約90人)では、1500度程度に熱した溶解炉で金属を溶かす工程があり、夏場の工場内は40度を超えることがある。

 空調設備6台を設置し、送風ダクトから15度の冷風を送って室温を調整。6~10月ごろは清涼飲料水を従業員に無料配布する。規則改正を受け、ファンで作業服内に風を送るバッテリー付きのファン付き作業服を約50人に配布。今後、1台1千万円の空調設備を県の補助金を使って2台導入する計画だ。

 夏場の空調設備の電気代や飲料代などは1カ月で約100万円に上る。吉川健取締役は「熱中症対策は売り上げを生まないが、労働力を確保するためには職場環境を改善し続ける必要がある」とした。

 工作機械部品などを製造するコダマ(松江市富士見町)は、空調設備4台を導入するほか、西日を遮る遮熱壁を設置。現場作業員には塩分補給のタブレットや吸収率の高い経口補水液、細かい氷の粒を混ぜた飲料水を支給する。さらにファン付き作業服の着用や冷感インナーの配布など、暑さ対策を多角的に進める。

 炎天下の屋外での作業が避けられない建設業でも対策が急務だ。土木工事などの今岡工業(出雲市塩冶神前2丁目)は規則改正に合わせ、熱中症患者が出た場合の応急処置の方法をはじめ、最寄りの病院や責任者への連絡体制などをまとめたマニュアルを作成し、全社員に配布して周知を図る。

 別所栄二総括安全衛生管理者は「最悪の事態にならないようにできる限りのことをしたい」と力説した。

(井上雅子)