短歌(寺井 淳選)

ひたすらにちぎりし数は千余枚吉野の桜額の中に咲く       出 雲 嘉本  靖

  【評】千余枚という数字に、ちぎり絵を作った人の姿がありありと浮かびます。下句で画題が吉野の桜であることが明らかにされ、それが額の中で咲くという構成もみごとです。

三階の教室窓から見える町疎みつも我この町で生く        安 来 高田  灯

  【評】歌の中の〈私〉は高校生でしょうか。ここは自分の居るべき場所ではないという感覚、誰もが一度は覚えるでしょう。「でもここで生きていく」という若い...