日本各地で降り続く大雨。長崎県雲仙市と長野県岡谷市では住宅が土砂崩れに巻き込まれ、複数の死者が出た。近年、斜面が広範囲にわたって崩れる大規模なものだけでなく、住宅の裏山が崩れるなど「局地的」な豪雨被害が相次ぐ。専門家は「急傾斜地の直下にある建物は、どこも被害が及ぶ危険がある」として、避難の徹底を呼び掛けている。
一面が泥に覆われた岡谷市のJR川岸駅前。15日に土砂崩れが起きたのは、幹線道路沿いに住宅数軒が立つ場所の裏山だった。巻き込まれた住宅は2階まで泥の痕が残ったが、周囲の家に人的被害はなかった。
一帯は山間地で、ハザードマップでは周辺の道路沿いの多くが「土砂災害警戒区域」に指定されている。今回崩れた山も警戒区域だったが、大雨で他に住宅を巻き込んだ土砂崩れは確認されていない。
また長崎県雲仙市で13日も崩れた土砂も、住宅2棟に集中。1人が死亡、15日現在、2人が安否不明となっている。
多発する大雨による土砂災害。2014年8月の広島土砂災害や、18年7月の西日本豪雨の際に広島県などで起きたような広範囲なものだけではなく、局地的なケースが目立つようになってきたのが近年の特徴だ。
19年10月に千葉県を襲った大雨では、県内数カ所で、住宅近くで土砂崩れが起きた。また同年の台風19号では、群馬県富岡市の土砂崩れで3人が死亡。現場は住宅が立ち並ぶ中の一角だった。
京都大防災研究所の藤田正治教授(砂防学)は、一般的に「裏山」と呼ばれるような住宅裏の小さな斜面にも危険性があるとした上で「今まで大丈夫だったからと思わずに、いつでも起き得るという構えが必要だ」と指摘する。
豪雨の際、住民が頼りにするのはハザードマップや、大雨の際に出される土砂災害警戒情報や自治体の避難指示(警戒レベル4)などだが、実際の被害をピンポイントで予測するのは困難だ。
砂防学会元会長で北海道大の丸谷知己名誉教授は「急傾斜地の直下にある建物は、避難警戒レベル3の高齢者避難よりも前に、家屋を離れてなるべく近い安全地帯に一時的に避難することが必要だ」と話している。