ベートーベンのピアノソナタ「告別」を弾いていると、右手に違和感を抱いた。2001年、ドイツのハノーファー音楽大の学内コンサート。留学中で当時25歳の智内威雄(44)の症状はその日以降、日を追うごとに悪化する。

 「ドレミファソラシドが弾けない」。日常生活でも右手で物を持つと、壊れるぐらい強く握ってしまう。髪は拳でしか洗えない。大学の音楽専門医の診断は局所性ジストニア。留学して二つの国際コンクールで入賞した。「良い結果の連鎖」と...