全国戦没者追悼式で黙とうされる天皇、皇后両陛下=15日正午、東京・日本武道館(代表撮影)
全国戦没者追悼式で黙とうされる天皇、皇后両陛下=15日正午、東京・日本武道館(代表撮影)

 終戦から76年を迎えた15日、政府主催の全国戦没者追悼式が東京都千代田区の日本武道館で開かれた。総人口の8割超が戦後生まれとなる中、遺族ら参列者は亡き人を悼み、遠のく惨禍の記憶の継承を誓った。新型コロナウイルス禍のため2年連続で規模を縮小し、今年は緊急事態宣言下となり、島根、鳥取を含む22府県の遺族が欠席。参列者総数は過去最少の185人だった。

 

 菅義偉首相は就任後初めての式辞で「積極的平和主義の旗の下、世界の課題解決に全力で取り組む」と述べた。昨年の安倍晋三前首相の内容をほぼ踏襲し、アジア諸国への加害責任には触れなかった。安倍氏は2012年12月の第2次政権発足後、それまでの式辞内容を変え加害と反省に言及せず反発を招いてきた。

 天皇として3度目の参列となった陛下は今年もお言葉で「深い反省」に触れられた。昨年に続きコロナの状況を挙げ、国民が力を合わせて困難を乗り越えられるよう願った。

 正午の時報に合わせ参列者が黙とう。父親が中国で戦病死した兵庫県の柿原啓志さん(85)が遺族を代表し「戦争の意識が薄れゆく今日もなお、私たちは失った家族の面影を求める。次世代へ思いをつなげ、平和の大切さを伝えようとしている」と追悼の辞を述べた。

 厚生労働省によると、追悼の対象は戦死した軍人・軍属約230万人と空襲や広島、長崎の原爆投下などで亡くなった民間人約80万人。参列者の中で最高齢は北海道の長屋昭次さん(94)で、兄が中国で戦病死した。最年少は東京都の宇田川英吾さん(16)で、曽祖父が東部ニューギニアで戦死した。式は昨年同様、マスク着用や消毒の徹底で感染防止を図った。

 式典は例年6千人規模で、うち遺族は5千人前後が参列している。今年の遺族参列は53人で、高齢化や式の規模縮小に伴い、戦没者の妻の参列が初めて0人となった。父母の参列は11年から途絶えている。

 宮内庁によると、上皇ご夫妻は追悼式に合わせて仙洞仮御所で、両陛下の長女愛子さまは赤坂御所で、それぞれ黙とうした。