【ワシントン共同】アフガニスタンでのイスラム主義組織タリバン復権は拙速な米軍撤退の結果だとして批判が集中、米国の威信は傷ついた。バイデン大統領は16日の演説で撤退を正当化しながらタリバンに基本的人権の尊重を要求。軍事力ではなく外交を通じて指導力を発揮する考えを示したが、展望は開けない。

 「米軍があと1年、5年、20年残っても違いはない」。バイデン氏は演説の多くを、拙速な撤退がアフガンの混乱を招いたとの指摘への反論に費やした。かつて恐怖政治を敷いたタリバンに女性の人権尊重を求め続けると強調。「終わりなき軍事展開ではなく、外交や経済の手段を使って実現させる」と語ったが、具体策は示さなかった。

 政治サイト、ポリティコなどの世論調査では、4月にアフガン駐留米軍の撤退を支持すると答えた有権者は69%だったが、8月中旬には49%に激減。撤退を順調だと受け止めたのは25%で、国内の視線も厳しさを増す。

 来年の中間選挙を意識するバイデン氏は演説で、トランプ前大統領(共和党)がタリバンと交わした4月末までの撤退合意という「取引」に矛先を向けた。「私は大統領就任時にトランプ氏の取引を引き継いだ。合意に従うか、さらに米兵数千人を送るのかという冷徹な現実しかなかった」と訴え、トランプ氏に責任の一端を押し付けた。

 トランプ氏は「米史上最も恥ずべき軍事的結果だ」「私が大統領ならこうはならなかった」とバイデン氏を攻撃。泥仕合となった。