全国で唯一、実際にたたら製鉄が操業された高殿(たかどの)が現存する雲南市吉田町吉田の菅谷(すがや)たたら山内(さんない)で、埋もれていた鉄池跡が発掘調査で明らかになった。雲南市教育委員会が調査成果を発表し、高殿で製鉄した銑鉄(せんてつ)などを池に入れて冷やしたとみられる。
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菅谷たたら山内は松江藩屈指の鉄師・田部家が江戸時代から操業し、国の重要有形民俗文化財に指定されている。
同市教委は、1906(明治39)年より前に描かれた田部家所蔵の「菅谷鈩(たたら)山内絵図」に注目。絵図に描かれた2カ所の鉄池のうち、今は土砂に埋まり見えない池の跡を今春、発掘調査した。その結果、池は新旧2段階にわたって築かれ、新しい池は長さ3・2メートル、幅1・7メートル、深さ0・6メートルだった。もう一つの高殿に隣接して見え、焼けた鉄の塊の鉧(けら)を冷やした鉄池とは、別の役割があったとみられる。
たたら製鉄の原料となった砂鉄を洗い直し、砂を除いて鉄の純度を上げた内洗い場も調査。洗い場を覆う建屋があったことが分かり、田部家文書の記載と一致した。
市教委文化財課の角田徳幸課長は「発掘調査によって、たたら製鉄の生産の在り方や具体的な施設の内容を解明できる。成果を将来的に活用していきたい」と話した。(景山達登)













