山陰中央新報社の号外に見入る市民=大田市大田町
山陰中央新報社の号外に見入る市民=大田市大田町

 地元の野球熱に背中を押され、頂点に登り詰めた。大田二中ナインが、千葉県市原市で行われた第43回全国中学校軟式野球大会決勝で躍動。選手たちのかつての指導者や、大田市内のライバル校の関係者が快挙をたたえた。 (取材班)

 「島根県勢初の快挙。よくやってくれた」。現地で歓喜の瞬間を見守った大田二中野球部保護者会の山崎寿典会長(47)は興奮気味だった。植田敬一朗監督やコーチの指導で鍛えられたナインは、大会4試合で無失策。集中力を切らさず戦い抜いた。

 新型コロナウイルス禍で制限があった大会で「何よりも大田市や地域、学校の支援があって出場できたおかげ」と強調した。

 快挙の背景には近年、県内大会で安定して好成績を残すスポーツ少年団の存在がある。「メンバーが少ない分、小学4年時から活躍していた」。大田二中で主力の勝部友悠、山崎悠登、知野見蒼太ら5選手を小学生時代に指導した、大田東ジュニアの安井昌行コーチ(52)=大田市波根町=は、勝因に選手の試合経験の豊富さを挙げる。

 3選手を教えた大田東ジュニアの生越孝人監督(55)=大田市久手町=は「勝てない時期もあったけど、みんなひたむきだった」と懐かしみ、全国での躍動に目を細めた。

 同じ大田市内でしのぎを削るライバル校も称賛し感謝する。「実力以上のものを引き出してもらった」と大田一中の中島秀和監督(42)。大田二中の強力な投手陣と打線に対抗することが大目標となり、目の色を変えて戦った。県大会決勝で大田二中と激突し敗れたが、中国大会で4強入り。優勝した二中とともに大田勢の強さを示した。

 少子化、人口減によるメンバー確保に苦しみながらも、少年団の指導者は力を入れ、大田一中、二中のライバル対決は野球熱を高めてきた。大田市野球連盟の松村信之会長(66)は「熱がさらに高まれば、なおうれしい」と期待した。